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* * *  彼の問いに対し、自分がどのような言葉を返したのか、うまく思い出せない。  気がつくと私は部屋のベランダにいて、大和の好きなビールを手にしていた。  雨は止んだのに空は灰色で、今日も星は見えない。世界は星をなくしてしまったのだ。私がこの手に、隠しているせいで。 『悪い、出張って言い忘れてて、今まで爆睡してた。三日泊まりなんだけど、コロッケまだ食えそう?』  少し前に届いた大和の嘘を何度も眺めて、手すりに額を擦らせた。 「うそばっかり」  プルタブはやっぱり固くて、私の爪では開けることができない。四度試して、すぐに観葉植物の鉢の横に置いた。 『ひかり、もう寝てんの』  返事を考えあぐねているうちに、すぐに大和の言葉が映し出される。私が今このメッセージを見ている表示が出ているはずなのに、おかしな問いかけだった。  続けて画面が切り替わり、彼の名が表示される。深夜の連絡に返事がこないから、私が錯乱している可能性を考えてすぐに電話をかけてきたのだろう。 「心配性、だなぁ」  俯きたくなくて、携帯を上にあげて見つめる。  上だけを見ていないと、私の汚い涙が溢れてしまいそうだから。  不明瞭な視界の中で、彼の名前だけが光を発していた。忙しなく画面が切り替わって、またしてもメッセージが映る。 『ひかり?』
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