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『みんな、ひかりを連れてかなかったんだろ。一緒に連れて行けたのに、みんな置いて行った。……ひかりに生きていて欲しいから。みんな、ひかりのことが大事で、ひかりのこと、すげえ好きだからじゃん』  彼の言葉は、まっすぐな光のようだ。眩しくて目に痛いのに、決してそらしたくない。その輝きを見ていたくて、私はまた上を向く勇気を取り戻した。  涙が溢れてしまいそうだからだなんて悲しい理由で上が向けるようになったわけじゃない。  大切なことを思い出して、もう一度両足に力を入れた。ふらふらと頼りなく立ち上がって、まっすぐに上を見つめる。  何も見えそうになかった空に、いっとう輝く明星が光る。  大和は教えてくれた。私の命は、たくさんの人に紡がれた大切な命だ。だから私は決して命を投げ出してはいけないし、生きることを諦めてはならない。  けれど、そのせいで大和の人生に傷がついてしまうのだとしたら、どうしてそれを許すことができるだろう。  ひとりぼっちのベランダで散々泣いて夜を明かし、私はその日、明星の輝きに誓いを立てた。  ちゃんと働いて、薬を飲まなくても平気なくらい元通りになって、お金を貯めて部屋を契約する。離婚届にサインをして、大和から離れる。  大和が心配しないよう、最後まで笑って、楽しくお別れをする。  全ての計画が順調で、順調すぎて、終わりは目前に迫っていた。
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