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『お気に召されましたか?』
「え? ああ、はい。すごくいいですね」
耳にあてた携帯から、不動産会社の女性スタッフの満足そうな声が聞こえてくる。
『それは安心しました!』
希望の間取りは1Kで、バストイレ別。事務所の最寄り駅まで乗り換えなしで行くことができる路線で、駅の指定はなく、徒歩十五分圏内の賃貸物件。
探し始めたのは一ヶ月前で、ちょうど次回の給与で目標としていた貯金金額に到達すると気づいた時だった。
「いいお部屋が見つかるまで、もう少しかかるかなと思っていたんですが……よかったです」
心にもない言葉を口にすると女性スタッフは私に同調する言葉を返していた。
真剣に探そうとすれば、これほどまでに早くに見つけられるものなのだ。それなのに決意から一年半も時間がかかってしまった。
貯金したお金は離婚の際に慰謝料として大和に渡すことも考えているが、彼が受け取るとは考えにくい。
受け取るはずもないとわかっていて、意固地になってお金を貯めた。そういう目的や区切りがなければ、離れることができなくなりそうだったからだ。
『もう少し間取りの広いお部屋もありますが……』
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