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「そ? じゃあ次から毎回着て。怪我しねえか心配になるから」  大和が私の耳に言葉を吹き込みながら、以前怪我した私の指先を撫でた。指先を火傷した日のことを、大和はやっぱり覚えていた。  彼はいつも、当然のように人を大切にできる。 「俺にも手伝わせて。揚げる作業とか」 「前のはただ不注意だっただけだよ」  だからそんなに心配しなくていい。私は大丈夫だから、気を使わなくていい。その分大和は、自分を大切にして欲しい。うまく言葉にできないまま、触れられていた手を優しく握った。  大和は私の行動に対し、溶けるように小さく笑って言う。 「べつに? 可愛い嫁が見れる特等席に立ちたいだけだし?」  茶化しているのか、誑しこもうとしているのか。私の頭では判別ができない。黙り込んでいるうちに大和は私の手を開いて恋人のように繋ぎ合わせ、肩口に額を擦らせた。 「あと、隣立ってたらいつでもキスできそうだし」 「きす」 「そう」  あっさりと私の胸を撃ち抜いてくる。一瞬呼吸が止まりそうで、焦って彼の手を引き剥がした。耳元で、喉を鳴らして笑う音が聞こえる。 「俺はいつでもしたいって言っただろ」 「っ、本当すぐそういうの言えちゃうよね」  耳元に囁かれるとくすぐったい。
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