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「大和の目、結構やばいよ……」 「やばかねえだろ。ひかりはあんま顔に興味ないよな」  そもそも私はその人の顔立ちがタレントに向いているかどうかでしか容姿を見ることがない。これは芸能マネージャーという仕事の職業病のようなものだと思う。  その点でいうと大和はすでにこの業界の人間であり、判断の必要のない人であると言える。  大和のことは美しいと思う。整った容姿であるとも思う。しかしだからといってそれがゆえに大和を好きになったわけでもない。  この感覚については、大和も私と同じだと思っていた。他人の容姿について言及しているところなど一度も見たことがないし、私に対してもそうだったからだ。 「大和はあるんだ……」 「あるだろ。可愛い顔した女がいたから声かけたわけだし」   今日、この瞬間までは。   「……誰の話?」  大和の口から奏でられる言葉の意味を噛み砕き損ねて、改めて問い直してしまう。彼の瞳には、わかりやすく目を丸くした自分の顔が映っていた。  一方大和は私の反応を訝しげに見つめている。それはまるで、なぜ分からないのかが不思議だとでもいうような表情だった。
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