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 俯いていたはずがもう一度顎を掬い上げられて、至近距離に顔を寄せられる。手加減のない誘惑にあてられて、ただ大和の目を見つめた。  彼は唇の端を持ち上げて微笑んでいる。それはまるで私のそばにいられるのが心底嬉しいみたいに。私に見つめ返されることがたまらなく幸福であるとでも言うかのようにじっと私を見下ろし、愛くるしいものを揶揄うように囁いた。 「顔真っ赤。照れてんだ」  今までの私なら、きっとこんなふうにまっすぐに大和を見つめたりしていない。茶化して、誤魔化して、大和の熱から逃げていただろう。  けれどお別れの日までは、できるだけ思う通りにこの場所にいると決めた。  気恥ずかしさで俯きたくなるのを堪えて、唇を薄く開く。 「てれ、て……いる」  私の拙い答えを聞いて、大和は穏やかな笑みを浮かべながら私の髪を撫でた。 「はは、素直に答えんのも珍しい」 「……いつも素直だよ」 「じゃあ、素直なひかりにきくけど、目ぇ赤いの、誰かに泣かされた?」  ――どうして気づいてしまうのかな。  思わず苦笑しそうになって、結局少しだけいつものように茶化して逃げてしまった。 「今はちょっと泣きそう」 「なんで?」 「大和が、すごい、迫ってくるから」
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