8

25/31
前へ
/317ページ
次へ
 大和はいつも通り私の嘘に対しては深く言及せず、おおらかに笑っていた。私の耳を撫でて、誑かすように耳元に囁いてくる。 「素直で可愛いから、食ってやろうかと思って」 「へんなことばっかりいう」  できるだけ誤魔化さずにいることに一生懸命になっている。できるだけ、この愛おしい熱から逃げないように必死になっている。  それだけでも精一杯なのに、大和は唆すように私の背中を撫でて、トップスの下から服の中に指先を侵入させた。 「っな、にして」 「変じゃないだろ。いいならベッド連れてくけど」  その手の熱さに、大和の視線の鋭さに、――彼の存在の全てに、心を撃ち抜かれて倒れてしまいそうだ。  大和のスイッチの切り替わりはあまりにも流れが早くて、いつも振り落とされてしまいそうになる。最近は特にそうだ。  下着のホックに触れようとする手つきに気づいて慌てて腕を掴むと、彼は焦る私を笑って意識を逸らすように私の耳に口付けた。 「ちょ、っと、やまと」 「ひかり、手え離して? 脱がすから」 「まって、いまから?」  あまりにも急すぎて、心臓が壊れてしまいそうだ。  それなのに、大和は私の問いかけにも動じずに私の目の前でエプロンの結び目を解き、私の唇に吸い付いた。 「そう。いますぐ」  獰猛な熱にあてられて、ますます顔が熱くなっていくのがわかる。  大和は私の反応を見ては笑みを深めて、熱くなった私の頬を優しく撫でた。その手つきさえどこかあやしくて、慌てて彼の胸に手をつく。 「っまず、ごはん、作ろう、……一緒に作りたい、な」
/317ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1111人が本棚に入れています
本棚に追加