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「……大和がそうしたいなら」
結局耐えかねて答えを囁くと、蚊の鳴くような声が出た。誰にも届かなさそうなのに、限界まで近づこうとする大和の耳はあっさりと私の言葉を拾い上げたらしい。
彼の唇が弧を描く。嬉しいと感じているらしいことを隠さずに表現する。その反応に胸が鳴ってしまった。
「へえ。じゃあ今もう一回キスするのは?」
「したいの?」
「したいだろ。いつもそうだっつうの」
本当にどうして今日はこんなにも真っ直ぐに打ち込んでくるのだろう。心臓が破裂してしまいそうだ。今すぐにでも唇を合わせられる距離に顔を寄せられ、やけくそになって呟く。
「じゃあ、いつでも?」
「いつでもいいんだ」
ふざけたつもりが、大和は目を丸くしてぽつりと言葉を返してきた。この言葉に、自分がおかしな言葉を口走ったことに思い至って、慌てて腰を引こうとする。
「やっぱ訂正、たまに、なら、……っ」
その腰に手を回されて、訂正の言葉を言い切るよりも先に唇に熱が移された。引き離そうと胸に触れた手を掴まれて、息さえも奪われる。体重をかけて抱きしめられ、潰れそうになったところで呼吸の自由が戻ってきた。
「じゃ、遠慮なく。いつでもさせてもらうわ」
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