8

30/31
前へ
/317ページ
次へ
 正論を吐いたつもりが、大和は怪訝そうな顔をして私を見つめる。 「なんで? 俺は別にそれで晶のこと守れんなら、どうってことない。むしろそれで晶が心配してくれんなら、怪我の功名かもな?」  何でもないことのようにあっさりと胸を殺す言葉を囁いてくる。これを恥ずかしげもなく言うから、私ばかりが好きに突き落とされる。  何も言えない私を見て、大和はおかしそうに笑っていた。 「なんで黙んの」 「あ、それ、もう揚げていいと思う」  強引に話題を逸らして視線を向けさせる。大和は私の言葉に違和感を持つことなく頷いてコロッケを揚げ始めた。今をときめく超人気俳優がキッチンでコロッケを揚げていると思うと、少しおかしい。  大和にも当然普通の日常があると知っている私でさえそう思うのだから、彼のファンはもっとそうだろう。 「あ、上手だ」  大和はもちろん火傷をするようなヘマをすることもなく、丁寧にコロッケを転がしてよい塩梅になるころにそれを取り出した。 「マジ? やった。この調子でサクッと終わらせるか」 「よしよし、頑張ろうね」
/317ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1112人が本棚に入れています
本棚に追加