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 大和の宣言通り、あのあと料理は段取りよく進んで、二人で食卓を囲んだ。  彼は珍しく、盛り付けられた料理を大口を開けて咀嚼して、私が少しずつ食を進めるのを見ながらお酒を嗜んでいた。 「減量、いいの?」 「あー、うん。まあだいたいいい線まできてるし。たまに飲んでもいいだろ」  役作りにこだわっていることは知っている。次の映画が過度に痩せすぎなければならないものではないらしいことを察して胸の内で安堵した。 「それならよかった」  心からつぶやくと、大和は少しだけ唇の端を持ち上げて笑った。  同じように皿を空けて手を合わせると、大和はすぐに立ち上がって私と彼の食事の後を片付け始めた。私がやると言ったのに聞かず、結局バスルームに押し込まれて抵抗を諦める。  丁寧に体を洗ってリビングに出たら、大和はすぐに立ち上がって、入れ替わりでバスルームへと向かう。  テーブルにはミネラルウォーターが入ったグラスが置かれている。どうやらもうお酒を飲むのはやめたらしい。  何となく、すぐにリビングに戻ってきたくて髪をタオルドライしながら寝室へ向かい、ドレッサーの前に座った。ドライヤーを手にとってスイッチを入れる。  水気が残らないよう丁寧に髪を乾かして、思っている以上に髪が伸びていることに気づいた。
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