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苦笑を隠さずに頭を撫でられ、その場から立ち上がる。そうすると大和が可愛らしいドレッサーの椅子に座ってドライヤーを手に取った。
予告されている分落ち着かなくて、そわそわしながらリビングのソファに座り込んだ。手持ち無沙汰でリモコンに手を伸ばし、適当なチャンネルを選ぶ。
画面の大きなテレビいっぱいに美しい顔立ちが映って、思わず目が釘付けになった。無意識に、右上に表示されたテロップに映る名前を読み上げてしまう。
「金城謙吾……」
KRプロダクションの若手俳優で、水野愛子の恋人だ。彼は艶やかな黒髪をさらりと揺らし、パーソナリティに眩しい笑みを向けていた。
好青年と呼ぶにはあまりにも退廃的で美しすぎるが、印象はそれが近い。もちろんテレビに映るための作り物である可能性もあるが、トークする姿は自然体のように見えた。
「ひかり? テレビ見てんの?」
後ろから声が聞こえて振り返り、パジャマに着替えたらしい大和にほっとする。
「うん、ちょっと気になって」
本当は気を紛らわせるためにつけただけだが、今となっては気になっているというのもあながち嘘ではない。
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