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「気になるって?」
「うん、金城さん。そういえば、事務所一緒だよね? 知ってる?」
特に他意なく、ただ気になったから質問しただけだ。けれど大和は私の問いに対して少し間をおいてから私の隣に座り込み、しばらく逡巡して口を開いた。
「……知ってる」
「あ、ほんとう? どんな人?」
「どんなって、別に普通のやつだけど……」
「いい人?」
「普通」
「ふつう?」
「ここに出てる通りのやつ」
裏表のないタイプのようだ。安堵して息を吐くと、大和に手を握られた。
「うん?」
「なんで男の話?」
「え? ああ、なんでというか、うん、ちょっと興味があって」
「興味?」
珍しく歯切れの悪い答えだと気づくのが遅かった。大和は何とも言い難い表情を浮かべている。たとえるならば、何かおかしなものを咀嚼してしまったような、そんな顔だ。
「あ、ええと。なんか、ごめん。事務所のことあれこれ聞くべきじゃないよね。自分で調べるね」
あまり聞かれたくないことを聞いてしまったのだ。気持ちを落ち着かせたくて、この場から離れるために大和の手を離そうとする。その手を逆に強く掴まれた。
「び、っ、くりした」
「自分で調べるって、なに?」
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