9

5/15
前へ
/317ページ
次へ
 答えないと、絶対に離してくれない。それが容易に感じ取れるような目だ。今までに見たことのない表情に狼狽えると、私の手を拘束する力が少し緩む。 「いや、別に怒ってないよ。ただ嫉妬してるだけ」 「しっ、……? しっと?」 「マネジメントしてるタレント以外にも興味持ったりするんだ? 興味ないと思ってた」  言葉の意味がわからずに聞き返すのに、大和はあっさりと別の問いを返してくる。金城に興味を持ったのも、確かに彼の指摘通り水野愛子が原因だ。  しかしプライバシーに関わることを告げるわけにもいかず、閉口してしまった。黙り込むと間髪をいれずに顔を上げさせられる。 「ひかり」 「う、ん」 「よそ見すんな。こっち向いて」  すでに私の理解の範疇を越えている。  訳もわからずに目を合わされて、戸惑っているうちに唇を奪われた。  深く口付けられて、バランスを崩しそうになって手をつく。その手がちょうどリモコンに触れると、彼は私の唇を喰みながら器用にリモコンを奪ってテレビを消した。  煌びやかな笑みが消える。同時に解放されて、上から覗き込む大和の目に囚われた。 「煽ってるのかと思ったけど、そんなわけねえか」 「あ、煽ってる?」 「嫉妬させようとしてんなら可愛いと思って」
/317ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1112人が本棚に入れています
本棚に追加