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「し、しっと。しっとって、嫉妬? ええ? 大和に嫉妬をさせようとしてる? 私が!?」
そもそもそんな感情を私に抱くことがあるとさえ思ってもいなかった。予想外の言葉にあんぐりと口を開いてしまう。
「そう」
「そ、そんなことしないよ。え? ええ? そもそも大和は嫉妬なんてしないでしょ?」
「何でそう思うの」
「え?」
だって、必要がないからだ。
混乱しすぎて不要な言葉を吐いてしまいそうで、口をつぐむ。大和が嫉妬を――?
あまりにも非現実的で、実感が湧かない。それなのに、私の手首を掴む彼の手の熱は間違いなく本物だった。
至近距離で見つめられると目が眩んでしまいそうになる。
「や、まとは、かっこいい、し。そういうことを考えてるとか、思ったこともなくて」
「嫉妬くらいするだろ」
「そう、なんだ」
うまく頭が回ってくれない。おかしなことを言われている自覚はあるのに、深く考えようとすると思考回路がショートしてしまいそうだった。彼は私の手を指の腹でなぞって、まっすぐに私を見つめている。その視線の強さで串刺しにされてしまいそうだ。
「なんか、きょう、本当に変だよ」
「変じゃないだろ、べつに。俺は嫁が他の男にうつつ抜かしたら普通に焦るし、必死にもなる」
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