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 私が家を出る時、いつもおまじないを口にしてくれる。行ってきて、ちゃんと帰ってくる。健康で誰にも泣かされずに無事に帰ってくる。  そのための魔法をかけてくれる。優しい魔法を聞いたら泣き出してしまいそうで、もうだめだ。  駅までの道を歩きながら、大和が追いかけてきていないことに心の底から安堵する。  ――そんなこと、大和にできるはずもないのに。  大和は自由に外出したり、外でおかしなことをしたりできるような職業には就いていない。プライベートさえ仕事に傷がついてしまうような繊細な職業を続けている。そんな彼が、寝癖をつけたままの半裸の姿でこの街に降りてくるはずがない。  できないと知っていて外に飛び出した。 「ああー、もう」  感じが悪かったかな。嫌な気分になっただろうか。自分が悪いとわかっているのに、冷たい態度をとられた彼がどんな顔をしているのか気になって仕方がない。  悶々と考え込みながら歩いていると、ふいにポケットに入れた携帯が震えて取り出した。  そのディスプレイに、たった今まで私の頭を席巻していた人の名前が表示されている。
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