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「タメ口でいいって言ってるのに」 「あー、うん。ありがとう、ございます」 「ふは、どういたしまして」 「花宮さん……、ひかりさん、スーツも似合うね」  爽やかな笑みを浮かべながら言われると、どうにもむず痒い。照れているのが伝わったらしく、ますますからかわれた。 「ひかりさん、年上感ぜんっぜんないなあ〜。本当気が緩む」 「あはは、いいよ。緩んじゃって。これからお仕事なんだから」 「いやあ、次の現場、ひかりさんがきてくれて助かる……」  軽快に話していた岡田漣が、次の現場の話になるとわかりやすく眉を下げた。彼が演技以外で苦虫を噛み潰したような表情をするのはあまりにも珍しい。思わず顔を向けてしまった。 「どうしたの?」 「うん、ちょっと困ってて。できればそれとなくフォローして欲しい」 「どんなこと?」 「次の現場で会う女優さんの中に、プライベートで会ったことある人いて」 「うんうん」  俳優同士にもいろいろと繋がりがあって、親交を深めていることも知っている。  私が所属する事務所は基本的には交友関係に寛容で、問題さえ起こさなければ何でも許される。  水野愛子の件も然りだ。しかし、それによってトラブルに巻き込まれることがないわけでもない。
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