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「うん。ちょっと、お風呂に入ったら眠気が限界になったみたい。大和のこと、待ってた、んだけど」  間違えて、星くんだなんて呼びかけてしまった。大和は特に気にすることもなく――いや、気にしていたとしてもそれに対しては言及することなく「ふぅん」と心の籠らない相槌を打った。  大和はジムから帰ってきたところだろうか。黒っぽいトレーニングウェアを着ている。時刻は午前一時で、間接照明だけが朧げに彼の輪郭を照らし出していた。  大和がおもむろに上着を脱いで、少し前の私と同じように時計に視線を向ける。  一緒に住み始めて知ったことだが、大和はあまり食にこだわらないほうだ。  ほうっておくと、プロテインと野菜と鶏肉しか食べないから、気を付けなくてはならない。彼に対して私ができるのは、本当にそれくらいしかないから。 「ご飯、食べた? 用意す……きゃ!?」  しかしながら大和は私が体を起こしながら尋ねると、その問いを最後まで聞くことなく両手で私の体を軽々と持ち上げてその場に立ち上がった。 「ちょ、」 「晶、薬飲んだ?」 「の、のんだけど、ちょっと」  彼の足は、迷うことなくリビングから寝室へと歩み始めている。抱え上げられたせいで近づいた彼からは、清潔なシャンプーの香りがしていた。
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