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「漣、いつもの相原さんは?」 「ああ、またギックリ腰で、ひかりさんが代打です。でもマジでひかりさんのほうがいいからお願いしようかな〜」 「なんだそれ。あんま事務所のスタッフ困らせんなよ」  心臓が嫌な音を立てっぱなしの私とは真逆に、大和はずっと平静を保っていた。  まるで私のことなどどうでもいいみたいに簡単に私から視線を外して岡田との会話に集中している。  疎外感を覚えるのはおかしい。この仕事を続ける限り、これからもこうして星大和とどこかの現場で出会うことがあるだろう。  その度に私は何でもないふりをして、笑って大和との関係を心からかき消し続けるのだろうか。  事務所の最寄駅を通る路線付近で物件を探したのは、もしかすると見立てが悪かったかもしれない。  こんなふうに突然現場で顔を合わせて、平気なふりをしていられるほど、私の心は強くない。  二人の話が弾んでいる様子を見て、わざとその場から遠ざかる。その間、大和の視線が私へと向くことは一度もなかった。  財布を持ち出して、自動販売機前まで歩く。  今日ここまでの仕事で、一週間分の労働と同じくらいの疲労を感じている。八田からの刺さるような視線も、溝口の怪訝そうな目も、星大和の完璧なまでの他人のような振る舞いも、すべてが億劫だ。  それでも岡田との約束でこの現場を中抜けすることはできない。  八方塞がりで、ため息が出る。
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