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「これ、どうぞ」 「あ、ありがとうございました」 「いえいえ、これくらいのことはいつでも言ってください」  金城から爽やかな笑顔を向けられ、笑みが浮かんでしまう。この人が水野愛子の恋人なのだと思うと少しだけ心が和んだ気もする。  コーヒーを受け取ろうと手を伸ばすと、その前に岡田が金城から受け取ってくれた。 「あ、漣くんもありがとうね」 「もー、言ってくれたら俺がついてくのに」 「あはは、ごめんごめん。星さんとお話ししてたから、邪魔かと思って」  暗に大和と一緒だから、八田には絡まれないだろうと思ったことを伝えているのだが、岡田はじっとりとした目で私を見つめているから、そうでもなかったらしい。 「邪魔じゃないし、ずっとそばにいてほしいっす」 「あはは、了解っす」 「ひかりさん、耳貸して」  静かに囁かれて耳を寄せると、すぐに不安を吹き込まれた。 「やばい、昼一緒に食おって言われた。ピンチ」 「え、なんでそうなったの」 「大和さんと二人で誘われた。大和さん、マジで奥さんのこと大事にしてるじゃん? だから女の子いる時は昼飯でも絶対行かねえの有名だってのに一緒に誘われて」 「……う、ん」  ――そんなこと、聞いたこともなかった。  大和はいつも、私には何も言わない。あの家に帰ってくるまでにどれほどの気遣いがあって、どれだけの制限をして笑ってくれているのか、いつも私は何も知らない。  当然の事実のように吹き込まれる言葉を聞いているだけで胸が潰れてしまいそうで、努めて頭から切り離そうとしている。 「それで最終的になんでか周りに俺がいく流れにされた。やばいかも」 「ええー。それはこまったね」
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