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 八田からの突き刺すような視線は消えないが、知らぬふりをして社用携帯を取り出す。そのまま相原へとメッセージを飛ばした。  相手の感情コントロールの難しさと岡田漣の精神的ストレスの度合いについて細かに書き込み、事務所としての対処が必要である旨を付け足すと、すぐに返事が戻ってきた。 『まって、花宮今、漣の現場にいるわけ?』  もっとも私の報告から遠ざかった現実について問いを立てられ、力が抜ける。 『そうです。きたら色々と大変なことになっていて、今も現実逃避がてら報告してます』 『星さんいるよね?』 『いますね』 『悪い。今すぐ代打立てて事務所戻っていいよ』  それができれば苦労していない。  私の状況を察したのか、さらに連絡が飛んできた。 『いやまじでごめんね。今からでも行ってやりたいけど、腰がだめなんだわ』  やはり私が知らないところで、相原は私が大和と出くわさないように仕事を調整してくれていたらしい。またしても私は知らぬ間に人の善意に浸かっていたのだと気付かされて、しばらく迷った手で返事を打ち込んだ。 『気にしないでください。何も支障はないですし、まずいのは漣くんの人間関係のことだけです。今後も配慮していただかなくて大丈夫ですよ。腰優先で』
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