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終始感じていた刺すような視線は間違いなく彼女のものだろう。ここまであからさまなのも珍しい。逆に、彼女から逃げようとする岡田の演技もかなり気合いが感じられた。
これは私の演技力では到底どうにもできないだろう。早々に白旗をあげて相原に報告して正解だった。
「共演NGだそうか」
「いや……、そこまではしたくない、ってか、うーん」
「人気の役者さんだもんね。困ったね。でもこんな変な茶番続けても意味ない相手だと思うよ」
率直に客観的感想を伝えると、岡田はますますテーブルに沈んでしまった。
「あー、もういっそ俺も結婚とかしてたらよかった」
「あはは、早まりすぎだよ。大丈夫だって。相原マネに相談したら何とかするって言ってくれたし」
「え? マジに? キレてなかった? 今から入れる保険ある?」
「うん、全然怒ってないし、相原さんが保険みたいなところもあるし」
実際には、岡田の悩み以外にも私に関する問題があったせいで、相原が岡田にたいしてどのような思いを持っていたのかを確認するような暇がなかったわけだが、そんな瑣末な事情についてはここで話す必要もない。
「悪徳保険ね」
「ふふ、とにかく相原さんが助けてくれるし、大丈夫だからね」
隣に座って、安心させるように肩を撫でると、溶けかけていた岡田が形を取り戻した。
「よかった。本当のこと言うと、結構マジで怖かったんですよね。なんかあの人あんまいい噂聞かないし、プライベートで会ったっていうのも、無理やり会わされた感じで……」
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