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「漣くんの周りにもそういうの、あるんだあ」 「俺まだ全然売れてないし、そういうのすげえ利用されるほうで、すぐに気付けないのが悪いんだけど、事務所にも迷惑かけると思ったら、めっちゃ忙しい相原さんには上手く言い出せなくて、結局こんなんになってから言ったりして……迷惑かけてすみません」 「そっかあ。この業界のいやなとこ知っちゃったね。でもね、迷惑とかは気にしなくていいんだよ」  彼は容姿が整っている分、こういう悩みに襲われやすいほうだろう。何度か別のタレントからも類似の相談を受けた記憶を思い出して、そっと背中を撫でた。 「我慢してたんだね。もっと言ってくれていいんだよ? 漣くんやみんなを守るのが私たちのお仕事なんだから」 「ひかりさん……、ありがとう。ちょっと元気出てきた」 「うんうん、もっと泣いてもいいんだよ?」 「男だから泣かないっす」  眉を下げながら器用に笑っている。私に教えてくれているよりも実際はもっといろんな方法でストレスを与えられていそうだ。それなのに、ずっと笑顔で振る舞っていたのだと思うと、胸が苦しくなる。 「関係ないよ? つらくなったら言ってね。胸を貸してあげよう!」
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