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 少し前までテーブルの上で溶けかけていたのに、もうすでに起き上がって、私が手配したお弁当に目を輝かせている。 「どうぞ。……ってお茶ないね」 「あ、大丈夫っす! 自分で買えるし」  切り替えの早さに圧倒されつつ断って席を立った。 「ううん、今はまだアレコレが解決してないから、私が行ってくるよ。すぐ戻ってこられると思うから、食べながら待ってて」 「はーい、待ってます」  上機嫌で手を振る岡田の顔が扉に隠されて、深いため息を吐いた。  ――めっちゃガン見されてた。  仕事中に私的なことを考えるなんてどうかしている。頭を振って、少し前に缶コーヒーを買った自動販売機までの道のりを歩く。  パンプスが立てる音だけが響き渡る廊下を歩ききって、目当ての自動販売機の前に立った。財布を取り出そうとポケットに手を入れると、間違って私用携帯を引っ張り出してしまった。  ディスプレイを見る前に慌ててしまいなおし、ため息を吐く。  ――私だけ、動揺しすぎだ。  落ち着いてペットボトル飲料を購入し、脇に抱える。  もしもここで八田とばったり出くわすような事件が起こったらドラマみたいだ。そのときはどんなふうに弁明しようか。  ありもしない未来を想像して気を紛らわせる。 「――ひかり」  けれど現実は創作物よりもずっとドラマチックに人生を襲う。
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