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暗闇に目が慣れたせいで、俯くと大和が私の指先で遊んでいるのがよく見える。
二人で眠る時は常に全身がぴったりと寄り添っているから、ふいに喉の渇きを覚えて目を覚ましても、彼を起こさないようにしながらキッチンに向かうのは至難の業だ。
「大和、暑くないの?」
「暑くない」
即答だ。思わず返事に詰まったら、耳元で大和の笑い声が響いた。げんなりして手を引きはがそうとしてもまったくうまくいかない。
「暑けりゃ冷房入れればいいし」
堂々と言いきるとおり、この寝室は夏場はいつも冷房が効いていて、冬は少しだけ設定温度が低い。
大和はきっと、涼しいくらいの気温が適温なのだと思い込んで布団に包まっていたが、この話を聞くに、そういうわけでもないのかもしれない。
「まさかと思うけど、人肌恋しくて設定温度低めにしたりしてないよね?」
「まさか」
「だよね」
「嫁を枕にして寝る口実にしか使ってない」
「意味同じじゃん」
「そう?」
いつものことながら、嘘なのか本当なのかわかりにくいトーンだ。結局今日も判別することができず、彼の足の爪先で足の裏をなぞられ、もう一度彼の手に爪を立てた。
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