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傷つけない終わりがどこにあるだろう。
黙り込むことばかりを選択する。卑怯な私の耳元で大和がもう一度口を開いた。
――いつも妥協させているね。
「いや、やっぱ全部答えなくていい。何でもない。忘れて」
大切な人にたくさんのことを妥協させて、私はこの場所に辿り着いた。この先に何があるのだろうか。この先の未来で、本当に大和は幸せでいられるのだろうか。
何度考えても、彼の人生の汚点にしかなれない自分が厭わしい。
何一つ言葉にできないまま、大和の手の拘束が緩んだ。沈黙が流れて、髪を梳かれる。その手の優しさで、耐えられずに後ろを振り返った。
「やまと」
どうしてこんなにも抱きしめたいと思うのだろう。ただ見つめられるだけで、どうして彼の心の傷がわかってしまう気がするのだろう。
決意なんて何度も崩壊して、心の中はぐちゃぐちゃだ。星の光は掴めない。一度だって掴めなかった。
だから大和を、私の道に引きずっていいわけもないのに。
優しい手が私の下瞼を撫でた。
「ひかり、キスしていい?」
大和に願われて私が拒絶したことなんて今まで一度もなかった。それなのに彼はいつも私の真意を覗くように目を見てこの言葉を囁く。
そういう優しさがたまらなく好きだ。
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