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世界でただ一人、私を大切に抱きしめてくれる人。その人にだけ聞こえるように耳元に囁いて唇を寄せた。
私たちの結婚を祝福した人はどこにもいなかった。誰一人として歓迎しなかった。どこかにはいたのかもしれないけれど、身近な人に喜ばれたことは一度もなかった。
だから、大和だけに聞いてほしい。
息を呑む唇に自分の唇を触れ合わせて、すぐに離れた。いまだに呆然としている大和の瞼の下を撫でて、頬をつねる。
――大和、私もあなたが好きだよ。大好きで、ずっと一緒にいたかったよ。
「ばか。どう見たら昨日の私が嫌がってたなんて思うの」
囁きながら咎めるように大和の頬を掴んで伸ばす。私の行動で、大和は綺麗な目をビー玉みたいに丸くしていた。
「ほら、口紅ついちゃった。だからダメって言ったのに」
「くちべに……」
呆然として、私の言葉を復唱している。まるで初めて聞いた言葉みたいに反応する大和がおかしくて、あまりにも愛おしくて胸が壊れてしまいそうだった。
ふざけて伸ばした頬を放して優しく撫でる。
「お家じゃないもん。お化粧してるでしょ? ウェットティッシュある? ちゃんと拭いて隠して」
「ある、けど」
「じゃあ別に、キスしてもいい」
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