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なるべく軽い調子で笑ってもう一度唇に吸い付いたら、コーラルピンクが大和の唇に浮いているのが見えた。
くすくすと笑っているうちに、大和がようやく調子を取り戻したのか、深く息を吐き出して項垂れた。
「……あせった」
「ふふ、大和も焦るんだ」
「焦るだろ。バカみてえに嫉妬して泣かせたかと思った」
「そんなことじゃ泣かないよ」
「……ふぅん」
まだ納得がいかないらしい大和の背中に手を回して、正面から抱きしめる。俯く頭を撫でると、大和は一瞬ぴくりと反応してすぐに全身から力を抜いた。
「大和重い」
「……うるせ」
「あつい」
「あ、そ」
私が悪態をついても、大和は決して私にもたれかかることをやめようとしない。その愛おしい重量に自然と頬が笑ってしまった。
私も大和が笑う頬の仕組みになれたらいいのに。
「何もないよ。大和の心配してるようなこと。ただお仕事してるだけ。タレントさんのプライバシーにかかわるから言えないだけなの。大和、わかるでしょ?」
「……ふぅん」
そっけない相槌なのに、縋るように抱きしめられるから笑ってしまう。いつも頼れるお兄さんのように振る舞っているのに、こういう一面もあるらしい。
それが心底愛おしいと思っていることに、どうか気づかれませんように。
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