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私の小さな答えを聞いて、大和が腕の拘束を緩める。真正面から向き合うと、彼は私の目に嘘がないことを確認するように瞳を覗き込んできた。
その目を隠すように、もう一度私から唇を寄せて抱きつく。
「口紅、移るんじゃねえの」
「ウェットティッシュ、あるからいい」
「匂いも移ると思うけど」
「……じゃあやめる?」
「……無理」
可愛い一面に堪えきれず笑った。私が笑うと、大和もそれが伝播したように笑って、二人で顔を見合わせる。
「やまと」
「ん」
「朝、ごめんね。なんか感じ悪かったよね。……顔合わせるの、恥ずかしくて」
「……そんな理由かよ」
「ごめん」
私の予想通り、彼は私が避けようとしていたことに気づいていたらしい。大和は本当によく人の心を気遣っている。
「可愛い顔したら許されると思ってるだろ」
「あはは、どんな顔。それで許してくれるの」
「可愛い顔だよ。あと許すし」
「よかった」
大和は大切な人にはいっとう甘い。いつもその人を優先しようとするかっこいい人だ。
優しさが眩しくて、刻みつけるように大和の瞳を見つめている。流れ星の奇跡みたいだ。彼が私を見つめてくれていることも、笑顔を見せてくれていることも。
私を見つけてくれたことでさえ、すべてが。
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