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「漣に、ひかりが俺の嫁だって話していい?」
「ええー、恥ずかしいな」
「嫌?」
「いやではないけど……。今日はダメ」
「なんで」
「漣くんも色々あるから、今日教えたら多分すごく気を使っちゃうと思うの」
恋人のフリをして欲しいと願った相手が尊敬する人の配偶者であると知ったら、気まずくて仕方がないだろう。
言ってほしくない本当の理由は他にあるのに、それを綺麗に忘れて笑った。
「……わかった。でも代わりにもう一回キスしたい。あと触りたい」
真っ直ぐに情熱を打ち込んでくる。大和は積極性のある人だから、きっとまた誰かと恋に落ちて私と同じように生活することができるだろう。
そうであって欲しい自分と、そうは思えない自分が共存している。
「もう触ってるけど」
茶化して、唇を寄せようとしている大和の頬を抓った。いつもならこうすればこれ以上近づこうとはしないのに、咎めるように私の目を見下ろして私の手首を掴んだ。
「うん。ひかり、手ぇ離して。キスさせて」
唆すようにやさしく耳元に囁き入れられて、おずおずと手を離した。顔が熱い。
何か言葉を返すよりも先に、啄むように三度口付けて胸に抱かれた。うなじを優しく撫でる手つきに胸がいっぱいになって、額を擦らせる。
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