11

28/37
前へ
/317ページ
次へ
 私のために嘘をつく大和。優しくて、強い人。私なんかがいなくても輝ける人。 「じゃあ、できたら?」 「うん、いつでもして」  いつも愛を表現するのが、とても上手な人。 「それでじゅうぶん?」  まだ少し足りなさそうな顔をする大和に苦笑しながら囁く。胸はずっと痛みっぱなしで、息苦しい。本当は、今すぐこの腕に縋りついてこの先の未来を壊してしまいたい。  でも、これまでたくさんの幸せをくれた大和を不幸にしたくない。 「昨日みたいにいっぱい触んのは?」  心を隠して笑う私の前で、大和は少しも隠さずに想いを伝えてくる。そのストレートな言葉に目が回った。 「やまと、本当にそういうこと言うの、恥ずかしくないの」 「ひかり、ちゃんと答えろ」  恥ずかしくて目を伏せようとするのに、あっさりと顎を掬い上げられる。まっすぐに瞳を合わせられて、蚊の鳴くような声が出た。 「ずるいよ、本当に」 「騙されていいよ」  いつも大和は私をたぶらかす時、騙されていいと言う。けれど私は騙されたのではなくて、自分の意思で大和の誘いに乗っているだけだ。  伝えたいのに、終わりに向かう関係ではどうしようもなく不必要な言葉だ。だから口をつぐんでずれた返事を出した。
/317ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1120人が本棚に入れています
本棚に追加