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私のために嘘をつく大和。優しくて、強い人。私なんかがいなくても輝ける人。
「じゃあ、できたら?」
「うん、いつでもして」
いつも愛を表現するのが、とても上手な人。
「それでじゅうぶん?」
まだ少し足りなさそうな顔をする大和に苦笑しながら囁く。胸はずっと痛みっぱなしで、息苦しい。本当は、今すぐこの腕に縋りついてこの先の未来を壊してしまいたい。
でも、これまでたくさんの幸せをくれた大和を不幸にしたくない。
「昨日みたいにいっぱい触んのは?」
心を隠して笑う私の前で、大和は少しも隠さずに想いを伝えてくる。そのストレートな言葉に目が回った。
「やまと、本当にそういうこと言うの、恥ずかしくないの」
「ひかり、ちゃんと答えろ」
恥ずかしくて目を伏せようとするのに、あっさりと顎を掬い上げられる。まっすぐに瞳を合わせられて、蚊の鳴くような声が出た。
「ずるいよ、本当に」
「騙されていいよ」
いつも大和は私をたぶらかす時、騙されていいと言う。けれど私は騙されたのではなくて、自分の意思で大和の誘いに乗っているだけだ。
伝えたいのに、終わりに向かう関係ではどうしようもなく不必要な言葉だ。だから口をつぐんでずれた返事を出した。
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