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「……タイミング、が、合ったら、で」
「めちゃくちゃ早く帰る」
大和はいつも丁寧に人を愛するから、この言葉を疑う余地もない。きっとこの言葉を告げたからにはすぐにでも家に帰ろうとするのだろう。
誠実で可愛らしい夫だ。
「本当そういうとこだよ」
「顔真っ赤。いいじゃん。恥ずかしがっててもどうせ可愛いんだから見せてよ」
仕事の関係でも、女性がいる食事の席にはいかない。夜に飲み会に誘われても、ほとんど断ってしまう。業界では愛妻家で有名な俳優。
私の知らない顔をいっぱい持っている優しい人。手を恋人のようにつなぎ合わされるとますます顔が熱くなって仕方がなくて、無理やり剥がした。
不服そうな顔をする大和を笑って、立ち上がろうと足に力を入れる。
その瞬間に腕を引かれて大和の胸に倒れ込んだ。
「やま、」
咎めようと口を開いたのに、その口を塞ぐように熱く口付けながら抱き込まれる。
何度も角度を変えて口付けられ、耐えきれずに肩を叩くと、ようやく解放された。黒曜石のような瞳がまじまじと私の濡れた唇を見下ろして満足げに呟く。
「口紅、全部とれちゃったな?」
「誰のせいで……」
「顔隠そうとするからつい」
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