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「良くな、……って切れちゃった」 「そりゃよかった」 「よくない! もう、漣くん待ってるから本当に行くよ」  今度こそ本当に戻らなければ岡田にいらぬ心配をかけてしまいそうだ。そもそも私が出てきたのはペットボトルを買うためで、決して大和に抱きしめてもらうためではない。  岡田がどんな不安を持っていたのかを思い出して慌てて立ち上がると、大和も同じように立ち上がって私の後ろに立った。 「……急に引き込んでごめん。わりと……いや、かなり、反省はしてる」  少し前までの悪戯っ子のような表情は鳴りを潜めて、今は少し申し訳なさそうな顔をしている。  きっと、今朝のような別れがなかったら、こんなふうに強硬手段に出ることもなかっただろう。大和がどれほど根気強い人であるか、私はよく知っている。 「本当に。びっくりしたし、もうやっちゃダメだよ」  あえて軽い言葉で返してその胸を優しく叩くと、大和はゆるりと唇の端を持ち上げて笑った。 「ん。家で構ってくれるなら許す」 「何で大和が許す側なの……」  ――きっと大和は許せないと思うよ。  これから起こることを思い出すと、胸の奥がつきりと痛んで蹲りそうになるから、なるべく考えずに笑った。 「ふふ、まあいいや。じゃあ私、戻るからね」  大和の答えを待たずに扉へと視線を向けて、一歩を踏み出す。
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