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「……今日、帰ったらマジでめちゃくちゃ構えよ」 「ふふ、時間が合ったらね」 「死ぬ気で終わらせる」 「ふは、無理しないで。じゃあね」 「ん。またあとで」  私はさよならと言って、彼はまたねと返した。いつもの愛おしいやりとりを耳に刻みつけて、静かに笑った。  大和の言葉に対して私は決して頷かず、小さく手を振って部屋を出た。  軽い扉が音を立てて閉まる。その音が恐ろしく重々しく聞こえた。  ただ一人。静まり返った廊下で立ち止まる。  転がったペットボトルを拾い上げようと顔を伏せて、すぐに上を向いた。  ――上を向く理由は涙が流れないようにするためじゃなくなったはずなのに。  張り裂けそうな心を押さえて、その場に立ち上がった。その瞬間こちらを見据える溝口と目があって、息が止まりかける。 「み、ぞぐち、さん」 「……髪、乱れてますよ」  あくまでも淡々とした指摘に慌てて髪を直す。心臓が嫌に音を立てて、気分が落ち着かない。 「す、みません」  焦りながら謝罪をしても彼は表情を変えることなく、冷静に私を見下ろしている。 「こういったことは大和のために控えてください」  メガネのブリッジを右手で押し上げて、感情のこもらない声で告げられた。  その言葉の意味を考えるよりも先に胸を後ろから突き刺されるような痛みが走って、顔があげられなくなる。
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