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 過呼吸を起こすとき、少しずつ周囲が白んで見えるようになる。頭が混乱して、その場から立てなくなる。しばらく芋虫のように無様に蹲っていることしかできなくなる。  それを知っていたから、そうなる前に、どうにか目を回しながら顔を上げた。  涙に濡れた顔で見上げると、溝口はわかりやすく顔を顰めていた。 「別れます、心配しないでください、ちゃんと、わかれます。溝口さん、は、これからも大和を支えてください、私はいなくなります、もうすぐに、だから、大和を、やまとを、おねがい、します」  かすれた声で言いきって、過呼吸を起こしかける体を引き摺り歩く。周りを見ている暇はなかった。溝口がどんな言葉を返したのかも知らない。  ただ、大和にだけは知られたくなくて、必死に誰もいない場所へと逃げ込んだ。  背中を丸めて一人、吸っても体を巡らない空気を何度も吸い込んで、震える呼吸をやりすごす。 「だい、じょう、ぶ、大丈夫、だから……っ」  大和を頼ろうなんて、思っていない。一人でも十分に対処できる。  ――精神病のフリを今すぐやめてください。 「ふ、は……、痛い、なあ」  
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