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『何時まで仕事なの』 『返事して。今どこ』  一日目、福岡での仕事を終えて、くたくたの体を引きずりながらビジネスホテルのベッドに飛び込んだ後だった。大和から大量の連絡がきていることに気づいたのは。  ここのところ、出張を伴うような仕事はしていなかった。だからいい機会だと思ったのだ。  そう思ったのが事実だが、決してそれを悟られたくない。今をときめく俳優相手に私の嘘が通用するわけもないが、気まずくてついに目をそらすと、大和は長いため息を吐いて私の体を抱きしめなおした。  首筋に顔を埋められて、頭の裏を撫でられる。 「三週も家空けんなら、それは言ってほしいってのが本音」  かすれた声が、秘密を囁くように私の耳元に触れる。彼はまるでこの世界の秘密を打ち明けるみたいに、心のうちを明け渡してくれる。  まるで私だけにしか本心を告げるつもりがないみたいに見えるから嫌だ。 「ごめん。つい、うっかり……」  一日目の夜、大和からのメッセージと着信が入っているのを見て、散々悩んだ挙句、電話ではなくメッセージを選んだ。 『ごめん、三週間出張になったの、言い忘れてた』  我ながら薄情な文章だと思う。  大和には、それを打ちながら何度も文章を消して、直して、もう一度消して、戻して、携帯を握りしめながら一人のビジネスホテルで声もなく泣いたことを知られてはならない。
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