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私のメッセージに、大和がすぐに電話を折り返してくるようなことは起こらないと知っていた。
間違いなく仕事が入っているだろう時間に返事を書いて送りつけた。
そのはずが、どうしてか、大和は一分もしないうちに電話をかけてきた。
携帯の画面に彼の名前が映し出されたとき、私がどんな思いでそれを無視したのか。
大和は死ぬまで、――死んでも知らないままでいてほしい。
「仕事に真面目なのは知ってるけど」
瞼の裏に浮かんだ哀れな自分の背中が、大和の穏やかな声にかき消される。私の背中を撫でる手は、まるで私を慰めているかのようだった。
蔑ろにされたのは、私ではなく大和なのに。
「くたくたになってソファで倒れるような仕事なら、やんないでほしいってのが俺の要望」
その頼みに応えようとしたら、私はずっと、大和の背中にしがみつき続けることになる。
三週間の出張だと知った大和は、本当に、眩暈がするほどマメに連絡を送ってきた。まるで彼の生活の一部に私が存在していることを知らしめるように。
この方法ではだめなのだと理解するには十分な時間だった。
私がどうしようもなく壊れているところを見せてしまったから、大和は少しの頑張りでも、私を止めようとする。
それが苦しい。
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