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 芸能事務所のマネージャーなどという特殊な仕事に就いたきっかけは、育ての親に少しでも早く楽をさせられるようになりたかったからだ。  実の両親は私が中学二年生の頃に事故死している。  二人は夏期講習を控えた私をおいて父方の墓参りに行く道の途中、飛び出してきた子どもを避けるためにハンドルを切り、ガードレールを飛び越えて坂の下に転がり落ちた。 『ひかり、行ってくるね』  それが両親と交わした最後の言葉だ。  それ以降は東京に住む母方の祖母に育てられた。母方の祖母が特別裕福だったわけではないが、それ以外に縁のある身内がいなかった。  そのような折、今の事務所のスカウターに声をかけられ、当時十六歳だった私はアルバイト代欲しさにすぐに祖母の同意を得ようとして、結果的に猛反対された。  スカウトをする側の今となってはよく目にする光景だが、当時の私は温厚な祖母がここまで強固に反対する姿など見たことがなく、大変狼狽えたものだ。  しかし今になって思えば、あの反対の意味が痛いほどよくわかる。  祖母に取り付く島もなく反対され、途方に暮れる私の隣に立っていたのが相原だ。 『いやあ、全然聞いてももらえなかったねえ』 『はい。でも、私、絶対にアルバイトはしたいんです。お金が必要で』 『そうかあ。……それなら、タレント以外の仕事はどうだろう』  そうして紹介されたのがマネージャー業務の補佐のようなアルバイトだった。
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