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 当然事務所のアルバイトは所属するアイドルや俳優たちとかかわる仕事よりも、事務作業が中心の、一般企業とそう多くは変わらないだろう平凡な業務内容だった。 『お、花宮ちゃん! ホテル手配しといてくれたの? 助かるよ〜!』 『相原さん、腰が悪いのに無理しちゃダメですよ! リサーチした中で一番良さげなホテルにしたので!』 『ええ。なんていい子。でもその部屋は俺のタレントさんに譲ってあげて欲しいな』  マネージャー業務に就く人たちはいつも優しくて、私は人の役に立てるこの仕事の魅力にすぐに取り憑かれた。  家族に取り残され、この世にたった一人になってしまったような途方もない疎外感の中、誰かに必要とされるということが、かろうじて私の心の均衡を保っていたのだと思う。  そうして与えられる仕事を黙々とこなして、たまに代打でできる範囲のマネージャー業務を行っているうちに私は高校を卒業し、ついに正社員として雇用された。 『花宮! 病院から電話かかってきてるぞ!』 『……え?』  しかし誰よりも恩返しがしたかった祖母は私の初任給が出たその日、病院の帰り道で事故に遭い、そのまま帰らぬ人になる。
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