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 生きていればと言った祖母が、あっさりと私を置いて死んでしまった。  人の命は儚い。痛いほどに脆くて、瞬きの隙に消えてしまう。それはまるで、一瞬空に走る流れ星の煌めきみたいに。  それを知っていたのに、どうして私は祖母にすべての感謝を伝えられなかったのだろう。  天涯孤独の身となって、私はますます仕事に打ち込んだ。  星くんに出会ったのはそんな時だ。  彼はオーバーサイズのティシャツにタイトなジーンズを履いたラフなスタイルでも一際目を惹く明るさを纏っており、考える間もなく、強い引力に惹かれるように、当然に声をかけた。 「こんにちは。今少しお時間いただけませんか?」  この時星くんは二十二歳で、ちょうど私と同い年だった。後に彼はこの日の出来事についてこのように語っている。 『あれ、実はお姉さんにナンパされたのかと思ってついて行っちゃったんだよね』  その言葉のとおり、彼は声をかけた私を見て目を丸くし、恥ずかしそうにうなずいていたことを覚えている。  私が働く芸能事務所でぜひタレントをやってみないかと問いかけたら、彼は少し悩んでから『芝居とかもできるんですか』とだけ質問してきた。当然私はこれに何度も深くうなずいて、彼はようやく顔をほころばせながら首を縦に振った。
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