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『マネージャーって、お姉さんがやってくれるんですか? それならぜひ、やってみたいっす』
目的もなく、ただ日々を消費する私の目の前に、星のように美しい男性が現れた。
道標のすべてを失ってたどり着いたこの場所で、星が笑っている。ただそれだけのことに強く胸が震えた。
『うーん、まあ、お姉さんがやったほうがいいっていうなら、それやってみます!』
信頼してついてきてくれている彼の心を裏切りたくなくて、必死に打ちこんだ。
少ない経費でやりくりして、できる限りの稽古をつけたり、ありとあらゆるコネを使ってオーディションにエントリーしたり、できる限りの力を尽くした。
星くんは端正な顔立ちをしているから、それを武器にした仕事をいくつも取って、困った顔をする彼に出演を願ったりもした。
『じゃあ、お姉さんと付き合えるなら、その仕事してもいい』
どんな仕事をお願いしても、星くんは最終的にいつもこう言って、すべての仕事を引き受けてくれた。
そうやってたくさんの機会を掴み続けて、彼はあっという間に有名な芸能人になった。ここまで、たったの二年間のことだ。
この先もきっと、彼は私が付き合ってくれるのなら、なんていうおかしな冗談を言いながら、光のような速度でまっすぐに進んでいくものなのだと思い込んでいた。
『じゃあ、花宮さん、あんま無理しすぎないでね。俺、一人でもちゃんといけるから』
『うーん、心配ですけど……』
『大丈夫! 行ってきま〜す』
――でも、もういない。
早朝の連絡。ディスプレイに映る無情な現実。恐るべき静寂に包まれる朝の病院。献花台。花、花、はな。最後に話したときの、彼のあどけない微笑み。黒い額縁に飾られた若すぎる遺影。
脳裏を過るすべてのものが、彼の死を肯定している。
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