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思いを形にしようと絡まった頭で長い時間をかけて考え込み、やがて私の頭に浮かんだのは、隙間なく詰まっているはずの彼のスケジュールのことだった。
「ほしくん、お仕事、しなきゃ」
「……ん、いっぱいしてきたよ」
「大変、私、仕事しない、と」
星くんが頑張っているのに、私が怠けているわけにはいかない。ただその思いで体を起こしかけ、星くんにすぐに制止された。
「忘れた? お姉さんは今、休職中だよ」
「……そう、だっけ」
――どうして休職なんて、しているんだったっけ。
そもそもこの部屋は誰の部屋で、どうして私は悲しくて、どうしてここに星くんが存在しているのだろう。
わからないことが多くて――多すぎて、首を傾げたら、眦から涙がこぼれた。
「あれ……、なんで、泣いてる……、んだ、っけ」
深く考え込むことができない。遮光カーテンで完全に光が遮断された小さな部屋の中で、呼吸を続けることしかできない。時計の針の音も、リビングから聞こえてくるテレビの音も、すべてが煩わしくて布団の中で閉じこもっていたら、いつの間にかすべての音がなくなっていた。――それっていつからだったっけ。
「わた、し、いつから、ここに」
わけもなく震える唇で問いかけると、星くんは美しい顔をいっそう苦しそうに顰めて、優しい手で私を抱きしめた。
「ほし、くん?」
「お姉さん、飯食ったら、薬飲んでまた寝よう」
「めし、……くすり」
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