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「だからさ、ひかりは生きてていいし、むしろみんなの分までたくさん自分を大切にしていいんだよ」  美しい解釈で、大粒の涙がこぼれ落ちた。何も言わずに沈黙していると、ゆっくりと体が離れて、顔を覗き込まれる。  嘘のない、まっすぐな瞳だった。 「わかった?」  優しい問いかけに無意識に頭が頷いて、彼は嬉しそうに微笑んだ。美しい笑みが惜しげもなく晒される。その眩しさで、涙が止まってしまった。 「だから俺と約束して。ひかりはもう二度と無理しない。無理したら、」 「無理した、ら?」 「俺がベッドに連行して、無理やり寝かせる」  おかしな罰を、あっけらかんと言いきった。彼の唇には、変わらず穏やかな笑みが浮かんでいる。    生活で起きる些細な行為に対処できなくなっているという事実は、今まで積み上げてきた積み木を、いつの間にかすべて崩されてしまっているかのような強い喪失感を私の心に与える。  崩れてしまったものがあまりにも多くて、四方八方に散らばっていて、収拾がつかず途方に暮れている。 「俺も一緒に考えようか」 「できるまでここにいるよ」 「昨日よりできるようになってんじゃん。大丈夫だよ」
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