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 私はもう大丈夫だ。きっとできる。  体が小刻みに震えるのも無視して、無理にでも口角を上げたつもりだった。どうか、お願いだから、強がりに気付かないでほしい。この部屋を出て、社会の膨大な情報の中でどうやって息をしていたのか、まだ少しも思い出せない。でも、もう二度と彼の輝きを独占してはならないことだけはわかっていた。  すべての不安を覆い隠してもう一度笑みを浮かべようと試みて、その前に彼の手に頭を撫でられる。 「晶はこの家を守る仕事があるだろ」 「家を守る、仕事?」 「そう。超重要任務。ひかりになら任せていいと思ってんだけど。どう」  できないことはやらなくていい。できることからやればいい。どうしてもやりたくなったら、方法を一緒に考える。  ふいに彼の言葉が思い出されて、強張っていた体から力が抜ける。彼はきっと、私の強がりになんて初めから気づいていた。そのうえで、私にも役割を与えてくれたのだろう。  きっと私にならできると信頼して、この仕事を託してくれた。そう思うだけで、背筋がピンと伸びるような気がする。  彼の期待に応えられる人間になりたい。結局はその思い一つだけを抱えて、私はゆっくりと頷いた。 「留守番、まかせて」 「おう。助かる」  この日の彼の笑顔は星の光のように輝かしかった。満足そうに私を撫でまわして、「さすがひかり」と私を褒める。  その優しさに触れるだけで、私は何者にでもなれるような気がする。
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