3

11/15

813人が本棚に入れています
本棚に追加
/161ページ
 タレントから恋愛関係の報告を受けたとき、マネージャーは速やかに状況を確認して、上に報告をする必要があり、場合によってはその交際を止めなければならないこともある。そのタレントを売り出している方向性によっても対処法は変わる。  それは、この仕事が、恋愛さえもビジネスの一部になる仕事だからだ。彼女はそれをよくわかっていて、苦しそうに眉を歪めている。 「だめだってわかってるんだけど。わかってたんだけど……、相手も同じ気持ちだってわかっちゃって」  この報告を受けるたび、いつも思う。  果たして人を好きになる心を、他人が勝手に歪めることはできるだろうか。土足で踏み込んで、粉々に砕くことができるだろうか。ぐちゃぐちゃに踏みにじったら、跡形もなく忘れられたりするのだろうか。  やめようと決意してやめられる想いが、この世のどこかにあるのだろうか。  人はあるとき突然、瞬きの隙に、まるで星の光に魅せられるように、言葉にできないような引力に惹かれて恋をしたり、愛を知ったりする。  それを誰かが止めたり、消したりすることができるのだろうか。  ――できるのなら、どうかその方法を、私に教えてほしい。できないから、私は今も星大和の隣にしがみついている。  目の前で私の言葉を待つ彼女は、きっと私とは違うだろう。  まっとうに恋をして、奇跡が起きて、その人も同じように自分に恋をしてくれた。  途方もない奇跡の上で手を取り合った彼女を、どうして私が責められるだろう。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

813人が本棚に入れています
本棚に追加