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タレントから恋愛関係の報告を受けたとき、マネージャーは速やかに状況を確認して、上に報告をする必要があり、場合によってはその交際を止めなければならないこともある。そのタレントを売り出している方向性によっても対処法は変わる。
それは、この仕事が、恋愛さえもビジネスの一部になる仕事だからだ。彼女はそれをよくわかっていて、苦しそうに眉を歪めている。
「だめだってわかってるんだけど。わかってたんだけど……、相手も同じ気持ちだってわかっちゃって」
この報告を受けるたび、いつも思う。
果たして人を好きになる心を、他人が勝手に歪めることはできるだろうか。土足で踏み込んで、粉々に砕くことができるだろうか。ぐちゃぐちゃに踏みにじったら、跡形もなく忘れられたりするのだろうか。
やめようと決意してやめられる想いが、この世のどこかにあるのだろうか。
人はあるとき突然、瞬きの隙に、まるで星の光に魅せられるように、言葉にできないような引力に惹かれて恋をしたり、愛を知ったりする。
それを誰かが止めたり、消したりすることができるのだろうか。
――できるのなら、どうかその方法を、私に教えてほしい。できないから、私は今も星大和の隣にしがみついている。
目の前で私の言葉を待つ彼女は、きっと私とは違うだろう。
まっとうに恋をして、奇跡が起きて、その人も同じように自分に恋をしてくれた。
途方もない奇跡の上で手を取り合った彼女を、どうして私が責められるだろう。
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