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「好きな人のやつも、やっぱなし。ごめん、浮かれてた」
「まって愛子ちゃん、」
「私、大丈夫だから! 気にしないで。……行ってきます」
「……ぁ、」
言葉が、出てきてくれない。手を伸ばして肩を掴もうと必死になっても、あっさりと扉が閉じられた。
言いたいことはたくさんあった。伝えたい思いは、いくらでもあった。
「なんでいっつも、……言えないの」
追いかけようと顔を上げた瞬間、社用携帯が音を立てる。その相手が岡田漣であることを確認し、結局私は水野愛子を追いかけることなくスタジオを後にした。
水野愛子の名前をインターネット上で検索するのはもはや癖だ。それと同じように私の指先はいつも同じ名前を検索している。
『星大和』と検索すると、雑多な情報が流れ出てくる。その中の一つを指の腹で選んで、まじまじと見つめた。
『星大和って、星 悠翔のマネージャーだった女と結婚したってマジ? 私生活でもジェネリックじゃん』
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