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◇ ◇ ◇  長い夢から目覚めるまでに、一年以上の時間をかけてしまった。  今から二年前の夏、私と彼は二十六歳になっており、結婚をして一年が過ぎたころだった。彼は仕事に忙しく、私は家で帰りを待つ生活を続けていた。 『だいぶん調子がいいですね。少し減薬を進めてみましょうか』  笑顔の先生に囁かれ、ゆっくりとうなずく。長い時間をかけて、私は星くんの夢を見なくなり始めていた。夜中に突然起きて泣きだしたり、叫びだしたりすることもなくなり、あの頃の私は本当に心が折れてしまっていたのだと自分を客観的に評価し、受け入れることができるまでに心の機能が回復していた。  彼は一つずつ、私ができなくなったことが再びできるようになるまで根気強く私と向き合ってくれていた。今では一人でタクシーに乗って病院へ向かい、先生と話をして帰ってくることができるまでになっている。  すべては順調だった。  彼が帰ってきたら、今日の病院での話を伝えて、少しでも早く彼を安心させたい。一刻も早くこのよい知らせを伝えたい。その日の私は明らかに舞い上がっていて、ふとある事実を思いだした。 「そういえば、携帯……」
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