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『減薬をしてみますが、難しいと思ったり、気分が悪くなったりしたら無理をしてはいけませんよ。減薬できなかったとしても、またゆっくり様子を見れば大丈夫ですからね』  少し前に見た先生の顔が頭の中で歪んでいる。  とにかく、少しでも狭い所に行きたくて、のろのろとソファの上を降りる。 「っ、痛っ、……」  その拍子にバランスを崩してテーブルの上に置かれていた何かをひっくり返し、音を立ててフローリングに倒れ込んだ。 「――ここ、本当に胸キュンのシーンでしたよね!」  音が聞こえる。  突然賑やかな笑い声と明るい光が飛び込んできて、瞬時に身体を抱えながら顔を上げた。 「て、れび……」  物言わぬ置物になっていたはずの器具が音を発している。この部屋でそれが音を発しているところを見るのが久しぶり過ぎて、今、ようやく気付いた。  彼は、私が恐れるものを、この部屋のすべてから排除してくれていた。音も、光も、現実も、何もかもを遮断して、私を抱きしめてくれていた。  派手な光彩の画面に、目が釘付けになる。  映し出されているのは昼間のワイドショーのようだった。最近流行りのドラマの瞬間的な高視聴率場面を切り取ってテーマにするコーナーだ。星悠翔も取り上げられたことがあるから、知っている。
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