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 星大和。職業は俳優で、画像の中の彼は、トロフィーを持ってスピーチ台の前に立っている。その表情は晴れやかで、まるで私の前で見せるものとは違っている。  そうだというのに、私には彼こそがこの部屋に現れる星だと分かった。  星大和(二月一日生まれの二十六歳)は日本の俳優。東京都出身。KRプロダクション所属。弟は俳優の星悠翔。  膨大な文章の中から何度も言葉を反復して読み直し、乱れる呼吸を整えようと服の上から胸を押さえる。 「ほしやまと、にほんのはいゆう、おとうとは、ほしはると……」  弟の星悠翔とは一卵性双生児で瓜二つの兄弟として育ち、幼少期はよく母親の前で入れ替わりをして怒られた。二十代を過ぎても両親は二人の区別がつかず、必ず違う色の服を着るよう言われていた。 「いちらんせい、そうせいじ……」  必死に読み進めようとしているはずが、何度も繰り返し同じ一文を読まなければ、何が書かれているのか理解することができない。  星悠翔は事故死し、私が自殺を試みたその日、星大和が偶然にも私の目の前に現れた。彼と私は面識がなく、星悠翔は、一度も自分に双子がいることを私に話さなかった。  彼は――星大和は、私と出会ってから、確かに一度も自分が星悠翔であるとは言っていない。 『星くん?』 『そうだよ』 「……たしかに、星くん、だ……」
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