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「弟の死は、たしかに俺の人生に影響していて、あいつの分までちゃんとやらなきゃって思ってるところはあります。それでできることなら何でもやろうって思いなおして――」  ふいに耳に届く声に、無意識に顔が上がった。  画面いっぱいに大和の顔が映る。  真剣な表情で、問いかける相手を見つめていた。コメンテーターが少し前に彼の特集があると言っていたから、ちょうどそれが流れ始めたのだ。  しかしこの時の私は、そういうことさえよくわからずに、ただ画面に映る彼の言葉に耳を傾けていた。  たくさんの情報で溢れかえる世界の中で、どうしてか彼の言葉だけはまっすぐに私の心に入り込んでくる。 「必要としてくれる人がいるなら、全力で向き合いたいって、今はそう思ってます」  役を演じるうえでの役者としてのマインドについての会話をしていたのだろう。そうだと知っていても、これが彼が私を拾った理由に思えてならなかった。 『結婚して。……そしたらもう、ひかりは俺の身内で、無理して働かなくていい』 『俺は好きな女とずっと一緒にいられるようになるから、それでいい』  私が彼を星悠翔だと思い込んだから、彼は星悠翔のふりを続けている。私に助けが必要だったから、彼は私に手を差し伸べている。すべては私のために起こったことなのに――。
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