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ジェネリック、という言葉をわざわざ検索して、網膜に刻み付ける。
正式な意味は知っていた。でもきっと、インターネットに書き込まれていたその言葉の意味は別にあるのだろう。
昔から、こういう知識ばかりが増えていくのがこの仕事の嫌な部分だと思っていた。だからこそ、なるべく知らないふりをして通り過ごしてきていた。
そのはずが、この日私は積極的に自らその言葉を調べて、呼吸を殺された。
「代用品、に、せもの、二流品……」
――下位互換的な意味合いで用いられる。
違う。
絶対に、そういう人じゃない。彼は一人の人間で、決して星悠翔の下位互換などではないし、代用品でも偽物でもない。それなのに、私の生き方が、彼をそうさせている。
事実に気が付いた瞬間、画面に楕円形の水滴が落ちた。
「あ、……っ、ぅ……っ、ちが、う……、ちがう、の、に」
星大和は優しい人だ。根気強くて、感受性豊かな人だ。
他人の心の痛みに寄り添って、本人よりも痛そうな顔をして苦しむ人だ。
一年半も一緒だったから、よく知っている。誰かの手柄を横取りしたり、真似をしたりする必要なんてない。その場にいるだけで輝く星のような人だ。
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